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IIoTよりも人材確保が先?!IIoT導入が他人事になっていませんか?

2019.09.20  基礎

産業用IoT(IIoT)が登場して、社会的にもその有用性が語られるようになって久しいですが、現状ではその名前は知っていても実際に製造現場に導入しているという経営者の方はまだまだ少ないと言えます。
特に、日本の経営層の方々は文系出身の人も多く、IIoTに関する全てを現場サイドや専門業者に任せっきりになってしまっているという状況も少なくありません。こうした状況では、IIoTの導入や機能増設などで予算申請が役員会議などに上がった場合、なぜそこまで予算がかかるのか?導入後の対費用効果が不明ということで予算申請が否決されてしまうということもあります。
これは、IIoTがよくわからず、先行投資の道を自ら断っていると言っても過言ではありません。

技能人材の不足を感じている経営者は多い

経済産業省が製造業の経営者に対してとったアンケート調査によると、工場での生産ラインなどで実際に加工などを行う技能人材の確保が困難となっており、実際に製造現場での納期遅れや受注数減といった影響が出ていると回答した割合が約3割にも達していることが分かりました。また、2016年の調査では2割程度だったのに対し、2017年には3割となっていることから、年々技能人材の不足は深刻な問題となっていることが分かります。
これは少子高齢化による現役世代の引退などによる人手不足がより深刻化してきている表れであると考えられます。


実働部隊でもある技能人材が年々減少すると、製造業の工場で働ける人が減っていくことを意味します。そうなると、大手製造業でも、ブロック単位では中小企業の下請け企業から製品を仕入れる形で成り立っていますので、日本の製造業全体が衰退の道を辿ることにつながってしまいます。これは、非常に大きな問題と言えるでしょう。

人手不足対策を人材確保で行うと限界が来る

同じアンケート調査結果より、技能人材の不足を補うように新卒採用や中途採用などの新規採用強化を行うと回答している経営者の方もおおくいらっしゃいましたが、特に新卒採用は少子化の影響で、なかなか思うような人材が集まらないということもあります。


外国人技能実習生や特定技能人材といった外国人活用なども検討している会社もありますが、外国人採用にもノウハウを定着させるためには研修など採用に関する費用などもかかります。さらには、苦労して人材育成を行っても他の会社に移ってしまうということもあります。また、人材不足は賃金の上昇とセットになります。同業他社で同じような業務内容であれば、給与の高い方に人が集まるということになります。
NTTコミュニケーションズでは、クラウド関連やビッグデータの解析といった技術の専門家に年俸3000万円の掲示をしております。こうした採用は今までの日本企業では考えられなかった動きでもあります。社会全体として、人手不足による賃金上昇が起こっている現在、人材確保による人手不足対策を行うと人件費の高騰を招く恐れがあります。

AIによる現業部門の自動化もなかなか進まない

AIによる製造現場の自動化により、従事する従業員人数が少なくても対応ができるようにしたいと考えている経営者の方も多いのではないかと思います。しかし、何から手を付けたらいよいのかわからないという漠然とした疑問から、導入に関する議論も先送りにしている方も多いのではないでしょうか?
AIによる判断もその判断材料がなければ、判断ができません。その判断材料を集める手段としてIIoTによる工場設備のネット接続がありますが、AIによる自動化とIIoTが関連性のないものと思われているとも感じます。
そのため、IIoTによって工場設備をネットにつなげたけど「その後どうするの?」という疑問を持っている人が多いのではないでしょうか?


こうした自動化によるメリットよりも、採用を強化して人材育成に走ってしまうため、工場の運営が人依存になってしまう大元でもあります。

過去の製造業の成功体験から脱却しきれていない

1980年代から1990年代にかけて、製造業は今までにないくらいに成功をしています。その背景には、人口の増加が労働人口の増加につながったことがありますが、この時に行ったのが、終身雇用を行い新卒で入ってくる人を一から鍛え上げるという採用方法でした。中途採用なども一般的ではなく、同じ会社に定年まで勤めるというのが当たり前だったからこうした企業教育モデルは確立しました。そのため、生産ラインで何かが起こっても、きちんと教育を受けた従業員が復旧を行い、生産ラインが停止している期間を短くすることができます。しかしこれは従業員の教育制度が確立していて、何かあった時の対応ができる従業員が大勢いる場合に限られます。
現在の人手不足が進行した日本の製造業では、こうした体制を維持するには莫大な人件費がかかり、従業員の教育にも時間を要してしまいます。

IIoTの導入は半数近くが取り組みを進めていない

Itmedia Tech Factoryによるアンケート調査によると、インダストリー4.0や工場内外のネットワーク化に取り組んでいないと回答した企業は47%にも及んでいます。調査を行った製造業の半数近くがIIoTに関して何も取り組んでいないというのが現状です。
その理由として最も多かったのが「対応できる技術者がいない」が38%で、次いで「コストが高い」「よくわからない」という理由が続いています。
このあたりでも、対応できる技術者がいればネットワーク導入を行いたいというように捉えることもできますが、今すぐには導入しなくてもいいと考えている製造業の経営者や管理職の人が多いという印象を受けます。
こうした理由にはIIoT導入にどこか他人事のようにも感じられます。

IIoTによって得られたメリットも大きい

アンケートの調査結果には、工場内外のネットワーク化によってどのようなメリットがあったのかということも同時に回答されています。
最も多かった回答が、データが見えるようになったことで改善点が見つかったということでした。生産作業性の向上やリードタイムの削減などIIoTを導入したことで今までわからなかった無駄が分かるようになり、効率化が図れていることが分かります。
しかし、こうした効果よりも、対応できる技術者がいない、コストが高い、よくわからないという消極的な理由でIIoT導入を見送っている製造業が多いことは、これからのIIoT導入の大きな課題と言えます。仮に対応できる技術者がいても、コスト面で現在の体制を続けてしまったりすることも十分考えられます。これでは今後続く人手不足に対応するには初動が遅くなってしまうという状況が来てしまう可能性もあります。

IIoT導入には経営層の判断が必要

IIoT導入には、それなりの費用が掛かり、中長期的に取り組む投資計画となります。また、ネットワーク関連の知識がないとどうしても「よくわからないから導入を見送る」という心理になってしまう気持ちもよくわかります。しかし、足元の人手不足が日を追うごとに深刻さを増しています。
いづれIIoTに投資する費用と人材育成、人件費にかかる費用が逆転してしまうという状況が起きても不思議ではありません。
そうなってしまった場合、IIoTによる業務効率化を行っていた製造業とそうでない製造業では、同じ製品の製造にかかるコストが違ってくるということも十分に考えられます。

まとめ:IIoTは人材育成と同等の先行投資

人材育成により、企業を維持するというのは素晴らしいことですが、現在の人手不足で人材の雇用が流動化が進む未来の社会では、その体制を維持するのは非常に人件費のかかるものになると予測されます。
こうした未来を見据えて、IIoTによる生産ラインの効率化は未来への投資と言えます。それは今後AI技術が発達してきたときにも役立つ非常に広がりのある投資です。