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テクノロジーニュース

ドイツのスマートファクトリー化!インダストリー4.0は国際競争力を高めたのか?

2019.10.07  インダストリー4.0ものづくり企業IoT基礎

製造業大国ドイツでは、スマートファクトリー化を行うためのコンセプトとしてインダストリー4.0を掲げています。
これにより、官民一体となってIIoTやスマートファクトリーの普及に努めています。ドイツのインダストリー4.0の現状は、他の国に置いて行かれたことによる焦りもあり、多くの製造業者が本気でスマートファクトリー化に取り組んだ結果とも言えます。
インダストリー4.0によって、ドイツの製造業は国際競争力を高めたのでしょうか?

欧州全体が不景気だった2000年代にドイツ経済も停滞

ドイツは自動車産業であれば、ベンツやBMW、電気産業であればシーメンスといった世界的に高品質な製造業の本拠地のある、製造業では超一流国です。西ドイツ時代には人口が6000万人ほどしかなく、国土も少ないにもかかわらず、GDPではアメリカに次ぐ世界第2位の経済大国に上り詰めたこともありました。
しかし、2000年代、欧州全体が経済の停滞状態となったこともあり、低成長の状態が続きます。これには様々な要因がありますが、自動車産業では、ドイツのフォルクスワーゲンが自動車メーカーの売上高ではアメリカのゼネラルモーターズ(GM)や日本のトヨタ自動車に抜かれてしまうような状況となります。
また、アメリカのグーグルやアップルといったネット関連企業が台頭してきて、今までこうした分野はドイツには例がない新しい分野です。こうした分野で後れを取ったということも2000年代のドイツ経済停滞の一因です。


さらに状況は悪化します。かつての名門と呼ばれてしまうような状況で、もっとも製造業を直撃したものの一つは急速な高齢化による労働人口の減少でした。
労働人口の減少による労働コストの増大が問題となっていたことが挙げられます。過去に良い時代があった先進国には、共通の問題となっており、日本の状況とも酷似しています。

経済停滞の中始まったドイツの国家的プロジェクト「インダストリー4.0」

ドイツで初めて「インダストリー4.0」という言葉が使われたのは2011年です。ドイツ政府のテクノロジーの諮問機関「ドイツ工学アカデミー」によって、第4次産業革命という意味合いを込めて、「インダストリー4.0」構想が発表されます。
なぜ第4次なのかということを簡単に説明します。ドイツ工学アカデミーは、人力や馬力から蒸気機関に移行した「第一次産業革命」(18世紀)、ベルトコンベアによる流れ作業による大量生産が可能となった「第二次産業革命」(20世紀初頭)、組み立て工程に産業ロボットを導入したFA化が「第三次産業革命」(1970年代)と位置付けています。
1970年代のFA化を第三次産業革命としていることから、インダストリー4.0は従来の自動化とは全く異なる完全自動化を意味していることになります。
この動きは、2000年代中盤に、ネット関連企業の台頭により従来型の製造業が衰退していることに危機感を覚えた当時のドイツ国内の有識者や製造業の役員などによって構成された諮問機関による検討が始まりでした。
2000年代といえば、日本ではライブドアなどのネット関連のベンチャー企業が注目されていましたが、従来型の製造業ではそこまでの危機感を感じられていないような時代背景でした。

インダストリー4.0の導入を進める主要企業シーメンスの例

ドイツのFA機器製造大手であるシーメンスは、インダストリー4.0の導入を進める代表的な企業です。
シーメンスでは、自動車産業界のインダストリー4.0による工場の完全自動化を推進してきました。
ドイツの自動車産業界では、部品ごとをブロックに分けてそれぞれの組み立てを行うモジュール化という製造工程を構成しています。
それぞれのモジュールで客先のカスタマイズなどが反映され、最終的にモジュール同士を組み立てるアッセンブリ工程を経て完成します。
この製造工程ごとにRFIDなどの無線タグで製品をネット上で個別に検索しやすくし、各モジュール同士を組み立てる際にも従来の人による手ではなく、産業用ロボットによるRFID管理されたリストと連携し、どういったカスタマイズの自動車が組まれている状態なのかを瞬時に判断できるようになりました。
これにより、複雑なカスタマイズの製品の製造を同時進行で行い、人の手を最小限とすることで、工場での人手不足に対応し、製造開始から納品までのリードタイムの削減に貢献しました。
シーメンスは、この自動車産業でのモジュール化によるインダストリー4.0を、他の業界への展開を図っています。インダストリー4.0の導入推進によって、シーメンスの企業利益率は大きく改善されました。

シーメンスや日立のようにITに強い会社は競争上優位に立ちやすい
出典:東洋経済

ドイツ自動車製造業は売上高でフォルクスワーゲンがトップ!

2000年代からのインダストリー4.0を推進してきたドイツですが、近年その成果が徐々に表に出てきていると言えます。
2018年の自動車製造業の売上高世界ランキングでは、フォルクスワーゲンがトップになりました。
フォルクスワーゲン、アウディ、ポルシェなどを傘下に抱えるフォルクスワーゲングループがトップになった背景にも「インダストリー4.0」による効果を上げていると言えるでしょう。製造工程での車体のタグナンバー管理にRFID(無線タグ)やフルオートメーションによる組み立て工程の完全自動化など極力人の手が入ることを少なくすることで、製造工程の無駄を省き、人手に頼ることない製造ラインの構築を行いました。また、数多くある自動車のオプションもRFIDによる通し番号により、一元管理されており、タグを検索すればどのような製造工程を経て、サプライヤーや輸送、どの国へ届けられるかがすぐにわかるようなシステムを構築しました。


これにより、種類が数多くあるオプションをどの車に搭載して、どのようなルートで顧客に届けられるかがより分かりやすくなり、最短納期での供給が可能となりました。
製造にかかるコストの他にも、インダストリー4.0による製造納期の短縮も大きく寄与している結果ということができるでしょう。

ドイツ製造業の国際競争力は大きく向上!それに対して日本は…

こうした統計データからもドイツの製造業は息を吹き返し、インダストリー4.0により、人手不足などへも対応してきているということができます。
それに対して日本国内ではどうでしょうか?
自動車製造業の売上ではかつて1位だったトヨタ自動車は2位に後退しています。トヨタでは生産ラインの各人が知恵による問題解決を図る「トヨタ式カイゼン生産方式」が大きな特徴です。これは生産ラインで働く人の能力を長期的に磨くことで高い品質の生産ラインが維持されるものですので、悪い意味では属人的なものとなり、品質が人に依存してしまいます。
生産ラインに多くの人が働いている状況が必要となり人手不足の状態の場合、この方式は非常に不利となります。
それでもトヨタ自動車は売上高世界2位ということで、まだその規模は維持できていますが、同じ方式を続けていては、今後はどのような状況になるか予想が難しいです。

まとめ/ドイツのインダストリー4.0は危機感から生まれた

人や組織は、生存が脅かされると環境や考え方を変えざるを得なくなり、ちょっと前までは考えられなかった環境にも適用できる能力を持っています。
ドイツでは従来型の製造業が、ネット関連の企業の台頭でいい人材が集まらない時代を経験したことでインダストリー4.0の普及に取り組みました。その成果は徐々に統計にも表れてきています。
人口減少、高齢化による労働人口の減少、従来型の製造業が以前ほどの勢いがないという状況の日本は、2000年代のドイツとよく似ています。
現在の日本の製造業も、IIoTやAIの活用などによる日本型のインダストリー4.0、スマートファクトリー化で、ドイツ製造業のような巻き返しを図る必要があります。