製造業用のAI開発、大体の費用はどれぐらい?
2022.09.13 IoT,FA,AI,予知保全,予防保全
機械設備、システムが故障する時間、場所を“予知“し、適切なタイミングで修理、メンテナンスを行う『予知保全』が大きな注目を集めています。ITテクノロジーの進化によって、機械設備の状態を詳細に取得できるようになりました。
それにより、取得した設備状態に関するデータを、機械学習やディープラーニングなど最新のデータ処理により、設備の将来を予想することが可能になります。従来と比較して精度の高い“予知保全“が行えるようになりました。
今回ご紹介したいのは最新の予防全にいくら費用が掛かるのか?です。製造業向けの機械学習開発の費用は、企画日数、作業日数、人員数等の要素によって決まります。
弊社の過去実績を基にした予算のご案内となりますので、ご参考になれば幸いです。
事例紹介
西部商工は、お客様との守秘義務を守るため実績のある会社名や、実際に作成した監視画面等具体的な完成後の状況をお見せすることができません。そのため、本記は、会社名や製造工程名などを仮名とさせて頂きました。
A社 様
会社規模:201~500名
対象になった設備の数:30
課題:
機械設備の保全をする際に、ベテラン社員のスキルに依存している状況。
人手不足もあるが、ベテラン社員の“勘”を数値化して、若手社員でも機械保全できるようにしたいとA社課長様のご希望によるソリューション。
工程ラインは5つあり、それぞれに異なる機械設備が設置されている。
AIを用いて開発したいソリューション:
機械設備の故障を1週間前に予知できるようにするのが目標。
予知されたもの・ことに向けて部品や人材確保などをすることによって、ラインのダウンタイムを短縮による売上ロス削減に繋がる対策を目指す。
なお、A社様は既にSCADAシステムを導入されており、5年間分の機械設備データを把握しています。そのため、データを新しく貯蓄する必要がないため、ソリューションを通常よりも早く提供できました。
AI開発のステップ・プロセス
AI開発がどのように行われるか、またそのプロセスにかかる費用について解説します。
①データ取得プロセス
最も代表的なものはInternet of Things (IoT)です。FAの世界であれば、(Supervisory Control And Data Acquisition)SCADAのようなものもあります。これらのツールを利用して設備のあらゆるデータを自社内のサーバやクラウドサーバなど一か所に貯蓄し、一元管理します。
高い精度で異常が検出できる信頼性の高いアルゴリズムを開発するために、できるだけ多くのデータを収集することが重要です。
ここのプロセスにかかる費用:
SCADAソフトウェアライセンス料 : ¥2,900,000 (税別)
CNCデータ接続ツール(30台) : ¥1,310,000 (税別)
諸経費(サーバー、開発環境など) : ¥2,500,000 (税別)
A社様の場合は、弊社が協力することになる前に、既にSCADAを使用されており5年分のラインまたは設備のデータがありました。このことにより大幅にコスト削減になってます。そして、開発時間も大幅にカットされています。
②データの前処理
データ取得プロセスに貯蓄されたデータは生データです。そのまま可視化すると何の価値もないただの監視画面になります。これは今までもありました。
そこで、データに内包された価値を顕在化させる必要があります。例えばデータの取得方法が誤っていて設備情報を正しく示せていない場合や、データ入力者の考えや志向が反映され、設備情報が婉曲されている場合などは、この前提から外れることになります。そのために、一般的な前処理の方法としては、外れ値やノイズの除去等があります。
ここにかかる費用は大体が人件費です。
データエンジニア(時間単位):¥3500 (税別)
30台の設備のA社、データの前処理期間が半年かかり、費用はおおよそ ¥3,360,000(税別)になります。
③特徴量の抽出
前処理が完了したら、次は機械設備の劣化・故障に合わせ、ある特徴量を識別する作業に入ります。つまり、ここのプロセスでは、たくさんデータの中からどれが「正常値」か「異常値」かを区別します。
このプロセスにかかる費用も大半が人件費となります。
データ・サイエンティスト(時間単位):¥3500 (税別)
特徴量の抽出期間が8ヶ月間かかったA社の場合、おおよそ¥4,480,000(税別)のコストがかかったことになります。
④予測モデルの開発・学習
データ処理だけで1年以上経ってから、やっとAIに関する作業に入ります。
先ずは、アルゴリズム(予測モデル)です。
予知保全の実現には、設備の劣化・故障を正確に把握することができる予測モデルが必要となります。教師あり機械学習、教師なし機械学習の2種類があります。それぞれを簡単にまとめると、故障発生時までのデータが存在する場合、教師あり機械学習の手法になり、そうではない場合は教師なし機械学習になります。
教師なし機械学習の場合、過去のデータがないため、物理モデルを使い、シミュレーションによりデータを生成して教師あり機械学習にするアプローチもあります。
データ・サイエンティスト(時間単位):¥3500 (税別)
機械学習エンジニア(時間単位) :¥3500 (税別)
予測モデルが高精度(正確に予測できている)になり、半年で ¥6,720,000(税別)かかります。
⑤システムへの統合
予測モデルを実際に稼働する環境にデプロイ可能(配置可能)な形式に変換する最後のプロセスです。AIによる機械学習閲覧用のソフトウェア(software 2.0)かWEBサービスになるかによって工数が変わりますが、A社様の場合はWEBブラウザで画面表示のみのため、1ヶ月ぐらいで完成できました。
データ・サイエンティスト(時間単位):¥3500 (税別)
機械学習エンジニア(時間単位) :¥3500 (税別)
合計¥1,120,000(税込)

AIによる開発総合コスト2000万円超!
従来システムの開発より高く感じた方も多いかもしれませんが、AIによる機械学習は長期間の開発となります。
A社の場合、30台の設備があって、データ取得プロセスを除いて、開発期間が2年間なので、月額費用は65万円になります。エンジニアの人数は二人にすると、開発にかかる人件費は一人32万円程度です。(ちなみに、システムエンジニア(SE)の人件費の相場は月40〜50万円と言われています。)
また、従来の予防保全(PM)のコストに比較します。大きな故障があるかないか設備のメンテナンスコストは大幅に変わりますが、機械設備の平均稼働年数が15年のA社様の場合、1台当たり年間およそ50万円です。簡単の計算すれば、30台の従来の予防保全コストは、年間で1500万円です。
AIによる運用コストが故障直前の予防保全によって年間600万円に削減されたとすると、長期間に活用できる予知保全システムを導入することによって40~50%のコスト削減になると言えるでしょう。

AI導入に活用できる補助金制度のご紹介
AIを実際に導入する際にはいくつかの補助金をご紹介します。必要であれば、ぜひ活用もご検討ください
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
中小企業者等が行う「革新的な製品・サービス開発」または「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援。
補助対象経費: 機械装置・システム構築費、技術 導入費、専門家経費、クラウド サービス利用費、外注費、知的 財産権等関連経費 等
補助金内容:
補助上限 1,000万円
補助率 中小企業 : 1/2以内
小規模事業者 : 2/3以内
HP: https://portal.monodukuri-hojo.jp/
商業・サービス競争力強化連 携支援事業 (新連携支援事業)
中小企業者が産学官で連携し、 また異業種分野の事業者との連携を 通じて行う新しいサービスモデルの 開発等のうち、地域経済を支える サービス産業の競争力強化に資する と認められる取り組みを支援
補助対象経費: 研究員費、謝金、知的財産権関連 費、マーケティング調査費、機械装置 等費、委託費 等
補助金内容:
補助上限 初年度: 3,000万円
2年度: 初年度の交付決定額と同額
補助率 補助対象経費の1/2以内 (AI・IoT等の先端技術活用の場合は 2/3以内)
HP: https://www.teitanso.or.jp/monohojo/