成形歯車研削盤 NCU交換 / サンプテンシリ製 SAMPUTENSILI
2025.05.09 メンテナンス

特定の加工や精度要求のために、海外製の工作機械を輸入して使うケースがあります。しかし輸入機の場合、エラーや故障の内容によっては、日本の修理業者では対応が難しい場合があります。西部商工では、シーメンスの認定ソフトウェアを所有しており、海外機に多く使用されているシーメンス製制御装置、さらに機械そのものの修理も可能であるため、幅広い輸入機に対応しています。今回はイタリア製の成形歯車研削盤の修理事例をご紹介します。
修理概要
・メーカー名 :サンプテンシリ SAMPUTENSILI
・機械の種類 :成形歯車研削盤
・機械型番:S375G(製造年 2005年)
・依頼内容:インターナルスピンドル切り替え不良の原因調査
・現象:インターナルスピンドルの切り替え不可
・結果:スピンドルモーター及びNCU不具合につき交換
ご依頼の背景
高精度歯車の製造を行うN社様(神奈川県)からのご依頼。
SAMPUTENSILIというイタリアメーカーの成形歯車研削盤において「スピンドルの切り替え不可」というアラームが出てしまい、加工ができなくなってしまいました。
西部商工に依頼した決め手
SAMPUTENSILIの機械は過去に西部商工が輸入代理店として機械を販売していました。お客さまも弊社を通して成形歯車研削盤をご購入されました。その後SAMPUTENSILI社は買収されたため、現在は代理店としての取り扱いはしておりませんが、国内で稼働している機械については、引き続き当社でメンテナンスや修理を行っています。その為、弊社に調査と修理のご依頼をいただきました。
修理対応
機械のアラームは、スピンドルの切り替え不可を示していたため、まずはインターナルスピンドルのモータを交換しました。これはスピンドルを加工品に合せて組み替える際に使用されるモータですが、インターナルスピンドルを取り付けた際に不具合が発生することから、インターナルスピンドルのモータの不具合を疑いました。 モータ交換後アラームは消えたものの、今度は機械のモードが切り替わらないという不具合が発生しました。設定は切り替わるものの、機械が切り替わらずに動かなくなってしまうのです。
そこでシーメンスのソフトウェアを搭載したエンジニア用の専用パソコンを使用し、イタリアにいる現地のエンジニアとリモートで状況を共有しながら、設定を一つ一つ一緒に確認しました。SAMPUTENSILIの機械はシーメンス製のCNCが搭載されています。 そのため、シーメンス製のソフトウェアを所有している会社でなければ、メンテナンスができません。西部商工ではシーメンスのソフトウェアを所有しており、イタリアのエンジニアと一緒に状況を確認することができました。 状況を確認していくうちに、CNCと機械の通信がプツプツと寸断していることが分かりました。 そこで新品のNCU(ネットワークコントロールユニット)との交換を実施。NCUには機械ごとのプログラムが組み込まれているため、新品のNCUを取り付ける際には、プログラムの書き込みを行う必要があります。NCUは工作機械の制御において非常に重要な役割を担う部品です。今回の事例でもそうですが、NCUに不具合があると機械そのものが動かなくなってしまうため、交換の際には細心の注意が必要です。NCUはユニットごとにバックアップとプログラムの書き込みの作業手順が決まっているので、事前にしっかりと確認を行い、注意深く作業を行いました。
NCUの交換を行い、さらに調査を進めるとスピンドルとドライブを繋ぐケーブルの中継点にも不具合があることが分かりました。接触不良を起こしていたのです。そこでコネクタを分解してハンダづけを行いました。 これらの作業を全て行い、機械が正常に動くことを確認して修理は終了しました。
お客様からの評価・当社からのご提案
お客さまからは、止まってしまっていた機械が動くようになったことで、喜びの声をいただきました。工作機械が停止してしまうと、その間は生産ができないため、他の機械で代替するなど、多くの苦労があります。今回は、お客さまの側でスピンドルモータを入手されるまでに時間がかかったこともあり、修理が終了してほっとされていました。
NCUのように、プログラムが導入されているパーツを交換する際には、事前にプログラムを読み込み、バックアップを行ってから、それを交換用の新しいパーツに導入する必要があります。しかし機械の故障状況によってはバックアップを読み込めなくなってしまうケースもあります。そのような場合には古いバックアップデータを使わなければならず、エラーが多発する原因になります。エラーが多ければ故障の根本原因を見極める判断も難しくなり、不具合の解決が困難になってしまう場合もあるのです。 そのため、当社では、メンテナンスなどと並行してバックアップデータを取得するようにしています。特に修理や保全作業がなくても、バックアップデータを取るためだけでも、弊社のサービスを利用していただきたいと思っています。できるだけ新しいバックアップデータが残っていることは、万が一の際の備えになるからです。
西部商工では、機械の種類やメーカーを問わず対応します
今回の歯車研削盤もそうですが、トランスファーマシンなど、特定の加工においては、日本製の工作機械ではなく海外製の工作機械が必要になるケースもあります。特にヨーロッパ製の機械ではシーメンス製のCNCが搭載されている場合が多く、修理やメンテナンスにおいては、それぞれの機械に対応したシーメンス製のソフトウェアが必要になります。 西部商工では、シーメンス製のソフトウェアに加え、機械系の修理対応も可能なため、今回の事例のような機械とソフトの両方が複雑に絡む不具合にも対応が可能です。海外製の工作機械の不具合などでお困りの際には、ぜひご相談いただければと思います