DAINICHI製 DL530旋盤 – X軸の異音と「数値では異常が出ない不具合」原因と解決【修理事例】
記事のポイント
- バックラッシ測定値 6µm(数値上は正常)
- 目視異常なしのため、音・負荷・動作挙動から原因特定
- ベアリング+タイミングベルトの複合要因
- 張りすぎない調整と補正値入力による現実的な解決
| お客様 | 関西エリア 金属部品加工業 製造業様 |
| 対象機械 | DAINICHI(大日金属工業)製 DL530 CNC旋盤 |
| ご相談内容 | X軸にガタつきがあり、早送り時に異音が発生。 また、テーパー加工時に加工面にスジが出るとのご相談でした。 症状は約1か月前から発生しており、完全に停止させるほどではないため、 騙し騙し使用しながら生産を続けている状態でした。 |
| 当社の対応 | 現地で実機診断を行い、X軸異音の原因をボールねじ支持部(サーボモータ側) ベアリング劣化およびタイミングベルトの亀裂と特定しました。 ボールねじの分解清掃、ベアリング交換、タイミングベルト交換を実施し、 ベルト張力調整とバックラッシ補正を行った結果、X軸の異音は解消し、動作は安定しました。 |
値と挙動が一致しない問題
本件では、事前確認の段階で
- X軸バックラッシ測定値:6µm
- ボールねじの外観:目視上異常なし
という結果が出ており、数値・外観ともに異常が見えない状態でした。
一方で現場では、
- 刃物退避時、座標値は約0.4mm動くが、実際の刃物の動きに違和感がある
- 加工結果に一貫性がない
といった、数値と挙動が一致しない問題が発生していました。
診断と解決策方法
当社エンジニアが現地にてCNC旋盤を調査しました。
診断内容
- X軸カバーを一部取り外し、ボールねじを確認
- バックラッシ再測定(結果:6µm)
- サーボモータ側は構造上、全面分解が必要なため音・振動・動作挙動を重点的に確認
これらの結果から、異音の原因はボールねじ支持部(サーボモータ側)ベアリング不良と判断しました。
対応
当社では、まず刃物台およびテーブルを取り外し、ボールねじを分解・清掃することで、内部の状態を詳細に確認しました。そのうえで、消耗が確認されたボールねじ支持部のベアリング交換を実施しています。交換したベアリングは、サーボモータ側に2個、ハンドル側に1個です。
分解作業の過程で、タイミングベルトに亀裂が発生していることを確認したため、当初の作業内容に追加してタイミングベルト交換を行いました。交換後は、プーリー位置やコマずれの有無を確認し、駆動系全体の状態をチェックしています。
その後、ベルト張力の調整を実施しました。ベルトを強く張ることでバックラッシは減少しますが、同時にサーボモータへの負荷や発熱が増大するリスクがあります。そのため、モータ負荷・温度・動作音を一つひとつ確認しながら、過度な負荷がかからない適正な張力に調整しました。バックラッシについては、補正値入力によって最適化し、精度と機械負荷のバランスを取る対応としています。
作業後の結果とお客様の声
作業完了後、X軸から発生していた異音は解消され、あわせて早送り時に感じられていた違和感も改善しました。各動作を確認した結果、送り動作はスムーズになり、機械全体の動作は安定した状態となっています。
一方で、加工精度については、今回の不具合が複合的な要因によって発生している可能性も考慮し、現時点では無理に追加作業を行うのではなく、一定期間の様子見と、必要に応じた再調整対応をご案内しました。
同様の症状でお困りではありませんか?
CNC旋盤のX軸トラブルは、数値上正常でも発生するケースがあります。異音・ガタつき・加工精度不良でお困りの場合は、現地診断が可能な西部商工までご相談ください。