ヨーロッパでIoTはビジネスにはなくてはならない存在です:海外からのメッセージ
2022.03.29 インダストリー4.0、ものづくり企業IoT、基礎
新型コロナウイルスの影響により、遠隔での監視やデータ収集の需要が以前にも増して高まっている状況です。IoTの需要は世界的に伸びていると言えますが、特にヨーロッパ諸国では、IoTがビジネスの中心となってきています。
今回は、IoT business newsより「IoT is now business-critical in Europe as global IoT adoption continues」のニュースをお届けします。
ヨーロッパにおけるビジネス上のIoTの位置づけ調査結果
やや抽象的な調査となってしまいますが、企業経営者などのIoT導入の意思決定権を持つ人への世界的な調査結果によると、ヨーロッパの企業では、アンケート回答企業の90%以上がIoTを導入していると回答しています。
この結果自体は米国やアジアと比べてもそこまで差はありません。
しかし、IoT導入が自社のビジネスにとって重要な位置づけであると回答した企業経営者は多く、特にスペインでは中国の99%に次ぐ96%の人がIoTがビジネスにおける重要なファクターであると回答しております。
IoTの位置づけは世界的に重要と考えている企業経営者が多いというアンケート結果となっています。
コロナ禍がIoTへの投資を促している
新型コロナウイルスによる影響は、IoT導入に関して追い風となっています。
「実際に現地にエンジニアが行って確認を行う」という一連の作業が、IoTによる遠隔監視に代わるなど、IoT導入を促す流れになってます。
最新のアンケート結果では、コロナ禍がIoTへの投資を促すと回答した企業経営者が31%から44%へ上昇しています。
IoT導入によって、今までも業務効率化が図られる可能性があった部分が、現地に行けない等の物理的な障害をコロナ禍が作り出したことにより、結果的にIoT導入への足かせになったと言えます。
新技術の登場もヨーロッパにIoT導入を促進させる可能性を秘めている
ヨーロッパでは、IoTと組み合わせると格段に効果を発揮する新技術の認知度は米国やアジアと比べるとそこまで高くありません。
しかし、各国のAIやエッジコンピューティングなど個別の新技術は比較的認知されています。ドイツやフランスなどヨーロッパでも国によって認知度が異なります。
例えば、ドイツではAIのみを用いた企業戦略の認知度が高く、実際に採用されています。しかし、IoTとの組み合わせにAIを用いることについては、途端に関心が低くなります。
スペインではエッジコンピューティングに対する企業戦略に関心を持つ経営者が多いですが、IoTとの組み合わせとなるとドイツ同様、関心が低くなります。
ヨーロッパ各国で新技術への関心は高いですが、IoTと連携させることに対する認知度はまだまだ低いといえます。
ヨーロッパでは様々な業界でIoTが取り入れられている
エッジコンピューティングやAI、デジタルツインなどの新技術に対する関心が高くても、実際にIoTが整備されていなければIoTを連携する道がありません。
スペインとフランスでは、電力エネルギーの送電網(グリッド)の自動化やグリッド保守の支援にIoTを活用している割合が40%程度と比較的公共分野でのIoT活用が進んでいます。
しかし、電力分野にとどまっており、石油やガスといったグリッドのIoT活用が応用できる範囲があるにもかかわらず、あまり活用されていません。
こうした部分もヨーロッパでのIoT普及の潜在的な需要として挙げることができるでしょう。
製造業が主力のドイツ、イタリアでは、製造業の全体プロジェクトのうち、IoTプロジェクトが使用される割合が約30%と、他の産業に比べると高いです。
工場の全自動化や安全に対する措置としてIoTが選択されているからです。
これらの結果から、ヨーロッパではIoTの需要はまだまだ伸びる可能性があります。
さらに新技術との連携に向けて、IoTを用いて様々な機器が接続されていくでしょう。
SDGsの実現にもIoTの普及が重要??
近年、国連が提唱したSDGsに、企業も高い関心を寄せています。
今回の調査における経営者の約30%が最優先事項に「持続可能性」を挙げています。
回答した経営者のほとんどが、IoTにより収集されたデータを活用することで、温室効果ガスの短期的なゼロや脱炭素に向けた施策を行うことが可能だと考えています。
例えば、EV車の充電のタイミングをAIによる機械学習で行い、充電が切れそうなタイミングにアラートを出し、充電する回数を最低限に抑えるといった施策があります。
こうした具体的なSDGsに向けた施策にIoTやAIなどの新技術の活用が期待されています。
まとめ:ヨーロッパでの潜在的なIoT需要
ヨーロッパでは、もともとIoTに対する関心が高く、実際に導入が進んでいる業界もあります。IoTと連携するとより効果が上がる技術に対しても、経営者などの意思決定を行うマネージャー層が高い関心を持っていることがわかります。
業務の効率化や省人化に向けた取り組みを積極的に行う準備があるといえるでしょう。
日本では、IoTに対する関心が高い人が増えてきていますが、新技術に関してはAIが先行しているだけで、エッジコンピューティングやデジタルツインなどのワードも知らないという人が多いのではないかと思います。
IoTや新技術と言われると安全性やネット接続のセキュリティのほうが、日本では前面に出てきてしまいます。
ヨーロッパの経営者の新しいものを取り入れる姿勢は日本でも見習う必要があるでしょう。