世界のIoT市場規模の拡大状況:海外からのメッセージ
2022.05.13 インダストリー4.0、ものづくり企業IoT、基礎
モノとインターネットを接続して、得られたデータを様々なテクノロジーに応用しようという試みがIoTです。
IoTの導入は世界規模で進んでおり、日本のみならず多くの国々でビジネスチャンスとしてとらえる動きが加速しています。
今回は「IoT business news」より、「Global IoT market size grew 22% in 2021」(2021年のIoT市場は世界規模で22%成長)の中から、IoT市場が今後も拡大し続ける根拠を探っていきます。
世界的な半導体不足による部品納期遅延の影響は?
新型コロナウイルスによるパンデミックとほぼ同時期に起こった世界的な半導体不足は、現在も改善の兆しが見えず、電子部品を使った製品の納期遅れなど、ビジネスの世界への影響を与え続けています。
こうした状況下においても、IoT市場は、半導体製品の納期遅れの影響を受けつつも市場自体は拡大傾向にあると分析しています。
2022年から2027年までのCAGR(年平均成長率)は22%になると予想しています。
IoT分野はAIや5G、クラウドなどとの親和性が高いことや国連が掲げるSDGsの実現のためには、様々なデータ収集を行い、検証をする必要があるということが大きな成長要因となります。
世界的な半導体不足の影響を受けてもなお、IoT分野の市場は拡大すると予想しています。
IoT市場に影響を及ぼす可能性のある16の要因
IoT市場は今後も拡大を続けると予想されますが、半導体不足の他にも、IoT市場に影響を与える可能性のある要因を16個挙げています。
これらは一概に市場の拡大を促進、阻害を一概に言うことができません。
それらのケースが複雑に絡み合って最終的には成長、成長鈍化、後退などの市場の評価につながります。
16個の要因を以下のように分類しています。
「需要の鈍化」「価格上昇」「技術的評価の低下」「不安定なサプライチェーン」を経済的要因、「リショアリング」「ロシアのウクライナ侵攻」「労働力の不足」「欧州データ法」を政治的、社会的な要因、「持続可能性の目標」「化石燃料への依存減」「COVID-19との生活」を環境的要因、「人工知能の成熟」「クラウドベンダーの動向」「接続性」「サイバーセキュリティー」「チップ不足」を技術的要因と分類しています。
それぞれの要因がIoT市場に与える影響がどの程度で、どのようなものなのかを詳細に説明しています。
経済的要因はIoT市場にとってマイナスが多い
世界的な経済市場は、新型コロナウイルスによる影響がいまだ強く、なかなか本来の経済活動ができない企業も多いと言えます。
また、船積み用コンテナの不足や各国でのロックダウンなど、サプライチェーンが不安定な要素が高く、まだまだ安定した部品供給などが難しい状況にあります。
ロシアのウクライナ侵攻などによる物価上昇や、金利の上昇に伴うベンチャー企業への投資額の減少なども、IoT市場ヘ与える影響は大きいと言えます。
IoTはまだまだ新しい分野の技術となるため、ベンチャー企業による導入が多いのですが、物価上昇や銀行の投資額減少は体力の少ないベンチャー企業にとっては大きな痛手です。
政治的、社会的な要因はプラスが多い
今まで部品は、安くて技術的な優位性があるところに受注が集中し、その企業が業績を上げる独占的なサプライヤーが多い状況でした。特に中国などの国に頼ってしまうとその国で何かがあると、一気にサプライチェーンが行き詰ってしまいます。
そのため、アメリカやヨーロッパも自国での製造業を見直す動きも出てきております。
人件費の高いアメリカやヨーロッパではスマートファクトリーによる製造が導入される可能性も高く、IoT市場にとってはプラスになります。
ロシアのウクライナ侵攻も、サプライチェーンや経済、政治にとっても先が見えないマイナス要因です。
さらに、IoTやAI、クラウドの知識とスキルを持った人材の不足は深刻で、今後の政治主導での人材育成なども重要課題です。
2023年にEUで制定される欧州データ法の存在もIoT市場にとってはプラスとなります。
取得したデータを一定の条件下であれば、加工しサービスなどに反映することが許可されるというものです。
個人データや企業の所有するデータは、所有者に権利があるとされていた今までのデータの位置づけを法的に大きく変えるため、IoT事業者にとっては、またとない大きなチャンスと言えます。
環境的要因は大きなプラス
国連の持続可能な発展を目指したSDGsにおいては、再生可能エネルギーがどのように消費されたのか?などのエネルギー管理や炭素排出量を測定するために多くのセンサがネットにつなげてデータを取得する必要が出てきます。
化石燃料の使用量を減らすために、エネルギー系の企業が水素生成のための水素ステーションを多く建設する可能性があります。
こうした新しい市場には、定量測定のためにIoT機器による管理が標準的に備わる可能性も十分に考えられます。
リモートによる勤務やロックダウンによる在宅勤務など、ネットを使ったビジネスの仕方が大きく注目された新型コロナウイルスによる影響ですが、今後もこうした状況とは共存していなければならないと言えます。
密閉状況の指標となるCO2濃度の測定値の遠隔収集や、リモート勤務が多くなったためにレンタルオフィスなどに用いられるスマートデスクなど、場所と時間を選ばない勤務方法への移行などにおいて、クラウドやIoTの重要性はより一層増していきます。
技術的要因はチップ不足が大きな影を落とす
技術的な部分としてAIとIoTの組み合わせが大きな需要を生む重要なポイントとなると考えられます。
2021年の段階でAIを実用的に活用している企業が16%しかなく、70%が実証実験段階であったというアンケート結果があります。
AIとIoTとの組み合わせによる製品の潜在的な需要の高さがうかがえます。
こうした中、MicrosoftやAmazonなどのクラウドベンダーが、IoTへの投資を続けているということも大きな要素です。企業規模の大きいクラウドベンダーが新しいサービスなどを開始すれば革新的なものになる可能性もあります。
IoTの接続方法となる回線も、WiFiや携帯回線もLPWAなどもあり、さらに低軌道衛星による空からの接続など様々な方法が取られるようになりました。
より接続できる範囲も広範囲になり、低価格での接続ができるようになっていくでしょう。
IoT機器が多くなることで、サイバー攻撃を受ける可能性も高くなってきています。
どれだけサイバーセキュリティーを高めても、抜け道からの不正アクセスは100%防ぐことができないということがIoT市場における逆風です。
また、半導体不足によるIoT向けのチップが不足しているということも技術的に大きな需要があったとしてもそれに供給が追い付かない可能性を示唆しています。
これに関しては技術的な要因というだけでなく、経済や政治的にも大きく影響される部分となります。
懸念要因は多いが、潜在的な需要による成長が見込まれる
IoTの世界市場においては、様々な成長阻害要因があるということがわかります。
半導体不足による供給部品の不足は深刻な影響を及ぼす可能性もあります。
しかし、再生可能エネルギーやリモート勤務など、今までになかった需要などにより、その阻害要因も打ち消すような成長を見せる可能性もあります。
技術的には親和性の高いAIや5G技術などの発達により、IoTと組み合わせを行ったサービスの展開などに期待が持てます。
今後、大きなサービス展開を見据えてのIoT導入は大きな投資でなくても、少しずつの前進と言えるでしょう。