製造業のためのIoT、インダストリー4.0 10の実例
2022.08.10 industry4.0、NEWS、ものづくり企業IoT、基礎
IoTやインダストリー4.0はトレンドとして近年よく登場するキーワードです。
IoTはだいぶ浸透してきましたが、インダストリー4.0は言葉だけを知っているというだけで、具体的にはどんなものなのかが今一つわからない、という方も多いのではないでしょうか?
今回は、イギリスのIoTメディア「IoTNews 」より、「The 10 best IoT Industry 4.0 use cases for manufacturing (製造業向けのIoTインダストリー4.0のベスト10ユースケース)」より、IoTを取り入れたインダストリー4.0の実用例を10例取り上げます。
その内容は、子供のころに未来として描かれていた理想的な社会がそこまで来ている、ということを予感させる内容となっています。
インダストリー4.0とは?
インダストリー4.0の位置づけについて、再確認いたします。
18世紀に起こった産業革命をインダストリー1.0として、4回目の変革期であるという意味での4.0と言われています。
FA関連のオートメーションが導入され始めた1980年代ごろをインダストリー3.0として、その先の更なる業務効率化、工場設備の完全自動化などが実現した工業分野の第4次改革期という意味合いで使われています。
これを踏まえて、どのようなケースがインダストリー4.0といえるのでしょうか?
実例1:ビッグデータの分析
IoTの普及が進んできて、様々な機器の計測データや定点観測データが、クラウドサーバなどに集まってきています。
このデータは、毎日クラウドサーバに流れ込んできているだけで、何が必要なのかといった取捨選択がされているわけではありません。
これらの何も加工されていない様々なデータはビッグデータと呼ばれています。これらのデータの分析、取捨選択、考察が行われて初めて人が必要な情報を入手することができます。
IoT機器からのデータを正確にフィルタリングや分析が行えるシステムがインダストリー4.0の領域になるといえます。
ビッグデータから必要な情報を抽出することで、さらなる高度な判断を行うことができるようになります。
実例2:自律型ロボティクス
人の代わりとなるような自律型のロボットもインダストリー4.0の思想といえます。
自律型といっても二足歩行であるとは限りません。工場で作業者が危険な作業に従事する代わりに作業を行うロボット、休暇を取らなくとも設計などの創造的な作業も行えるロボットが自律型ロボティクスです。
AIのディープラーニングなどを応用し、自ら学習しロボット同士で組織を作り、人間の管理がいらなくなります。
なんだかこれはターミネーターのような未来になってしまう恐れがありますね。
人間の管理を超えない措置が必要となるかもしれません。
実例3:シミュレーションとデジタルツイン
AIによるシミュレーションや、コンピュータ上に本物のような世界を作り上げるデジタルツインですが、これらを組み合わせることでインダストリー4.0になりえます。
デジタルツインでは、オフィスが完成前にどのような感じの広さなのか、光の量はどの程度かといった体験を行うことができるような技術です。
製造業においては、試作品をデジタルツインの仮想空間上に作り上げて、どのような状態となると故障するのか?といったシミュレーションを行うことができます。
AIによる学習を取り入れて、人が条件を変えなくても、より強度的に強固な構造などを自動で算出することができるようになります。
また、エンジニアサービス部門においても、現場と同じ状況を作り出して、遠方の作業前に、本物と同じような作業のシミュレーションをデジタルツイン上で行うことができるでしょう。
実例4:システム統合
経理システムや設計のCADサーバシステム、資材調達システムなど製造業においては様々な別々のシステムがそれぞれの専用システムとして稼働しています。
CADを使って設計した図面から自動で資材がピックアップされて、さらに売上原価も算出するシステムなどは部門間のシステムが完全に統合されなければできません。
インダストリー4.0では、このシステムも別々という概念はなく、一つの巨大なシステムを通して何でも行えるようになっています。
実例5:産業用IoT(IIoT)
製造時の不良品を少なくするために、製造現場の温度や湿度を測定して空調機器の動作に反映するというIoTよりも産業分野で高度な利用方法を行うIoTを産業用IoT(IIoT)と呼びます。
IIoTにより、不良品と温度や湿度の関係をAIによる分析で空調装置の稼働状況を変更するという使い方ができます。
実例6、7:サイバーセキュリティ対策、クラウド性能の向上
サイバーセキュリティは、システムの統合や自律型ロボティクスなど、乗っ取りなどが発生するとその影響は大きくなります。より高度なサイバーセキュリティ対策が必要となるでしょう。
クラウドサーバにおいても、より高速で大容量が求められるため、高機能化が図られるでしょう。重要度も増してくるため、故障が発生した場合のバックアップなどより高度な冗長構成を求められるようになります。
実例8: アディティブマニュファクチャリング(AM)
アデティブマニュファクチャリング(AM)は、3Dプリンタに代表されるような既存の技術でもあります。
インダストリー4.0においては、AIなどによる情報分析により、人が考え付かなかったような構造の試作品が3Dプリンタで作られたりする、ということがあげられます。
実例9:AI活用
製造業へのAI活用はすでに始まっていると考えている人も多いと思いますが、インダストリー4.0では、大規模な情報を自分で学んでAIの機能が常に向上している状態となっています。それにより、人間が気付かないようなこともAIが気付いて人間に教えてくれるという状況にまで機能が高められています。
実例10: 拡張現実(AR)と仮想現実(VR)
拡張現実(AR)では、現実の世界にバーチャルの世界が入り込むようなことで、分解しなければ見られない機械の内部を映し出したりすることができます。
一方で仮想現実(VR)は全く現実には存在しないものを作り出すことも可能です。
現実にないものを一部に映し出すようなARとVRを融合させることで新たなイノベーションを生み出すこともインダストリー4.0といえます。
インダストリー4.0は世界全体で起こるイノベーション
よくGAFAなどの巨大企業がインダストリー4.0関連の市場を独占するというような状況が起こりえるという心配の声も聞こえます。
しかし、インダストリー4.0はまだ始まったばかりであり、まだ誰にでもチャンスの可能性があります。
インダストリー4.0を実現する、といってAIやAR、デジタルツインなどの既存の技術がコアになって構成されています。
これは、別々に開発された個々の技術が融合することで、便利な世の中としてインダストリー4.0が浸透した社会はすぐそこまで来ている、といえるでしょう。