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ソリューションブログ

【無駄な工具消耗の削減】インコネル718タービンブレードの加工

2023.09.01  基礎未分類材質製造DX

シーメンスの切削加工を効率的にするソフトウェア「ACM」を使用した研究論文「インコネル718タービンブレード加工にOmative(新名:ACM)ソフトウェアを採用」を紹介します。この論文はポーランドの工科大学の研究室での研究成果によるもので、加工の難しい合金素材「インコネル 718」におけるOmativeソフトウェアの採用はどんなメリットあるのか?というところに研究主題を置いています。

https://www.researchgate.net/publication/312014812_Adoption_of_the_Omative_system_in_Inconel_718_turbine_blade_machining

加工の難しい合金素材「インコネル 718」における研究

インコネル718とは、ニッケルを主体とし、炭素や鉄などを加えた合金でジェットエンジンや人工衛星の部品、原子力発電所の原子炉などに使われています。強度はもちろんのこと、高耐熱性、耐高温クリープ性、耐腐食性、耐酸化性に優れており、熱に強く腐食しにくい合金です。これだけの強い合金ですので、それだけ加工が難しいというのは想像できるでしょう。

まず、インコネル718の切削加工に耐える工具を見つけることが非常に重要です。この素材は他の材料に比べて切削時の力が大きく、その結果工具が迅速に摩耗してしまう傾向があります。そのため、予定していた工具の寿命よりも短くなってしまい、工具の費用が増加してしまう可能性があります。

本論文は、非常に硬い材料を切削加工する際に、工具への負荷を監視しながら、送り速度を調整すること(Omativeの特徴機能)がどのような利点をもたらすかについての結果論文です。

試験内容 切削工具のモニタリング【負荷を“コントロール“】

Omativeソフトウェアは工具の負荷状態を監視して、負荷が上昇しすぎる前に、送り速度を自動調整の仕組みです。簡単に言えば、負荷が上昇しすぎる前に切削にかかる力を抑えるというソフトウェアです。

使用した機械DMG MORI (モデル=DMU 100)
使用した工具Sandvik Coromant製フライスカッター(刃数= 5, d= 50mm)
切削条件切削速度Vc          : 40m/min
縦方向の切り込み量ap : 1.15mm
横方向の切り込み量ae : 30mm
一刃当たり送り量fz.    : 0.15mm

事前準備

実際の試験加工を開始する前に、Omativeのラーニングモードを実行しました。工具を新品の状態から始め、摩耗が進行するまで加工テストを繰り返しました。このラーニングモードにより、Load Curve(負荷曲線)が生成されました(Fig. 1の4)。このLoad Curveを基にして、下記の2つの方法を用いて工具監視をしました。

  1. Monitoring of maximum load : 100ms毎に、ラーニングモードのときの最高負荷と比較というモニタリング
  2. Monitoring in learning curve band : ラーニングモードのLoad Curveの上限と下限をリアルタイムに比較というモニタリング。 
Fig. 1
1Alarm Level
(負荷の上限と下限 – 超えると機械を停止させる)
2Warning Level
3Maximum recorded load
(ラーニングモードのときの最高負荷)
4Load Curve(負荷曲線)

結果

新しい工具と交換後、加工を開始しました。時間が経つにつれて、加工中において約10回程度【Warning Level】という上限・下限を超える警告が発生しました。その後、さらに2回【Alarm Level】という上限・下限を超え、ソフトウェアが機械を停止させました。2回目の【Alarm Level】までの加工時間は42分であることが確認されました。

実験の結果を説明すると、工具が摩耗していくと、新品の状態よりも負荷が増加する傾向があります。Omativeソフトウェアの負荷監視・自動調整機能により、工具メーカーの推薦タイミング通りに工具寿命を達成しました。また、衝突防止機能も備わっているため、工具の過負荷による問題を未然に防ぐことができました。

加工中のOmative画面と新品状況の工具
加工が終わったOmative画面と摩耗状況の工具

インコネル718の加工にOmativeシステムを導入するメリット

インコネル718は高硬度の合金のため、切削加工が非常に困難です。Omativeソフトウェアにを利用して、工具負荷の状態をモニタすることができます。工具寿命の終わりを見える化して適切なタイミングで交換できるとなることが大きなメリットです。

また、切削途中の工具折損による加工中断もしくは工具の刃が材料にロックして取れなくなってしまうという事態に陥る前に、折損の警告を行ってくれるというところもメリットの一つです。これらにより、インコネル718のような切削加工が難しい材料でも、人の勘に頼ることなく、工具折損の危険性の警告を行うことで、工具の無駄をなくし、より効率的な切削加工が実現できるようになります。

Omativeは、SIEMENS(シーメンス)に引き継がれる

Omative(新名:Adaptive Controling & Monitoring(ACM))は、切削中におけるスピンドル・工具の負荷を常に監視し、その情報を送り速度の自動調整に活用するOTソフトウェアです。具体的には、例えば刃物が材料に進入するような場面では大きな負荷がかかりやすいため、送り速度を低下させる調整が行われ、逆に負荷が比較的低い切削中には送り速度を上げるように制御されます。このソフトウェアの主な利点は、サイクルタイムを短縮することが挙げられますが、この研究論文では工具の無駄消耗を削減する点においても大きな利点があると考えられます。

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